2019年01月19日

図面を描けってよ!? の巻


 昨日の続編。
立体にはメチャ弱い私。
だから大学時代はデザインの専攻も「グラフィック」(平面)だった。

ドラフターなんて一生使いたくない・・・・・と思っていたのに
(その当時、レンダリングや製図はドラフターを使っていた)
何の因果か転職した先でプロダクトデザインをやるはめになろうとは!

(だいたいディズニー・キャラクターの図柄の文字板だけデザインすれば
いいと思って入った会社だった)

私の席にはドラフターが置かれ、これで図面を描け と言われた。
確かに大学時代、ちょっとは製図の授業があって習いはしたが
すぐに挫折した。

平面図を描き、側面図、断面図を描く。
途中まではまあ、見よう見まねで描けた。

だが、私を最大に苦しめた
『円錐挽き」なるものが登場した。

『円錐挽き』
字の如く、円錐形状の刃物を回転させて削るのだ。

腕時計の裏を見て欲しい。
裏ブタの外側から円周状の筋が何本か見れる。

腕時計は鍛造という金属を打って製造するのだが、
バリ取りのために回転する刃物でそのバリを取る。

他にも腕時計を少しでも薄く見せるために「裏挽き」という手法がある。
そして、時計とバンドをつなぐための脚
これを「カン脚」と言うが、これも裏から円周状に挽いている。

この挽きの形状を決めるのもデザイナーの仕事であった。

だが、まだ丸い時計本体部分を挽く ということは想像できたが、
カン脚をこの円周刃物で挽く(削る)と裏がどんな形状になるのか
全く想像ができなかった。(作図ができなかった)

泣く泣く先輩デザイナーに教えてもらった。

デザイナーが作図した図面を元に、試作工房のおっちゃま達が
1/1のモデルを金属を削って作っていた。

その試作職場のおっちゃまから電話がかかる。
「誰がこんな図面を描いただ?
 こんなもん作れんわ!」
と、怒鳴られた。

塩尻から諏訪まで(試作工房は上諏訪にあった)説明に
慌てて出掛けて行った。
そして、間違いを直し、平謝りしてお願いして作ってもらった。


そんな苦い想い出の試作図面。

工業製品図面とも違う腕時計ならではの独特な製図法だ。
今ではCADでサササーーーと画面上で描けるけれど、当時はドラフターに
トレペを貼り付け、鉛筆で描いていた。


当時の図面を再現してみた。
イラストレーターで作画したので、寸法はいいかげんだ。
パッと見ても普通の人はどう見ていいかわからないかな。

1/4づつ異なる図面となっている。
一つのモノを上面、底面、側面、断面で表現してある。

青い線部分が『円錐挽き』の刃物形状だ。


図面を描けってよ!? の巻

図面を描けってよ!? の巻

立体造形 大の苦手な私。
よくぞここまで習得したもんだと自分で自分を褒めてあげたい。

(いやいや、これくらいのものできて当然だ!と先輩がたには怒られちゃうね・・・・・)




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